なぜ英語が話せないのか? 「努力のパラドックス」を解き明かします
突然ですが、あなたはこんな風に考えたことはありませんか?「なぜ、こんなに一生懸命英語の勉強を続けているのに、いつまで経っても英語を話したり聞き取ったり出来るようにならないんだろう…?」もしあなたがそんな疑問をお持ちであれば、今回のお話はまさに打ってつけの内容となるでしょう。
私はこれまで長年にわたって本当に多くの英語学習者と接してきました。中にはすぐに英語を話せるようになった人もいますが、10年以上学習を続けていてもサッパリ話せるようにならないという人もたくさんいます。そんな英語学習者を見ていて、常に感じてきたことがあります。
それこそが「一生懸命勉強している人ほど英語がなかなか話せるようにならず、逆にあまり英語の勉強をしているように見えない人の方がすぐにペラペラになってしまう…」というパラドックスです。普通に考えれば、英語を話せるようになるためには一生懸命勉強する必要があるでしょう。故に、多くの英語学習者が今この瞬間にも頑張って英語の勉強を続けているわけです。
成功する英語学習者の「隠された共通点」とは?
しかし本当に皮肉なことに、実際には英語の勉強を一生懸命続けている人よりも、あまり英語自体には興味が無く、むしろ他のことに強い関心を持っているような人の方がハイレベルな英語力をアッサリと身につけてしまうというケースが多々あります。一体なぜそのような不条理なことが起きてしまうのでしょうか?
まずはじめに、あなたに理解して頂きたい極めて重要な事実があります。それは「英語の勉強に執着する人の方が英語を話せるようにならず、むしろ英語以外のことに興味がある人の方が英語ペラペラになっている」という事実です。この事実を潔く受け入れ、あなた自身の英語習得に応用することで、あなたは確実に英語力を身につけることが出来るようになるでしょう。
実際に、私のコーチング・クライアントの中でも多くの英語学習者がこのアプローチを取り入れて英語を話し、聞き取れるようになっています。さらに言うと、そんな「英語習得に成功した人々」には、あなたもよくご存じの多くの有名人が含まれています。
例えば、俳優の渡辺謙さん、真田広之さん、福士蒼汰さん、石原さとみさん、菅野美穂さん等が英語堪能で有名ですね。いずれの方々も元々は英語を話せず、渡辺謙さんに至っては42歳で初めて英語に触れるようになったそうです。他にも、世界で活躍するアスリートやアーティスト、研究者など多くの日本人が実際に英語をペラペラ話せるようになっています。
英語の勉強をしない方が英語が話せるようになる?
将棋棋士の羽生善治さんがテレビのインタビューで流暢な英語を披露している姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか。羽生さんは自身の英語力について「なぜそんなに英語が上手なのか?」と尋ねられた際「チェスの世界大会に参加するのに英会話力が必要だったから」と答えています。なるほど、どうやらこの発言に英語力上達の大きな秘訣が隠されているようです。
そうです、これら一流の活躍を見せる日本人の多くが、多忙な毎日にもかかわらず英語を話せるようになったのには「ある共通点」があるのです。それこそが「自分の好きなこと、興味・関心のあることを追求する過程で英語力を身につけた」という共通点です。
いずれのケースでも「英語の学習」が目的だったわけではなく、英語以外の興味・関心の対象があったわけですね。それを追い求めている上で英語を使っていたら、結果として実用的な英語力・英会話力が身についてしまったということです。
好きなことを追求した結果、副産物として「英語力」が!
この顕著な例が、日本人初のアメリカ・アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したメイクアップ・アーティスト Kazu Hiro さんのケースです。その英語を聞いたら、あなたは彼が元々ネイティブ・スピーカーだったのではないかと思うかも知れません。しかしKazu Hiro さんは京都の一般家庭で生まれ育った純粋な日本人でした。
Kazu Hiro さんは高校時代、偶然手に取った映画雑誌でアメリカのメイクアップ・アーティストであるディック・スミス氏によるリンカーン大統領の作品を目にしました。その作品に感銘を受けた彼は、自身の顔に同じくリンカーンのメイクを施し、写真を撮ってスミス氏に送ったそうです。その後、スミス氏から直接返信を受け取った彼は、高校の英語教師に頼んで英語を添削してもらい、文通を続けました。
当然ですが、この時点でKazu Hiro さんは英語をまったく話せなかったのですが、文通によって英語の成績が伸びたそうです。そして1996年、27歳の時に彼はスミス氏に師事する為に単身渡米します。もちろん英語は全く喋れず、当初は人種差別を受けることもありました。彼の場合も、30歳近くになるまで英語は一切話せない典型的な日本人でした。
しかし、自分の好きなことを追求して単身渡米し、そこで「英語を勉強する」ということよりも、むしろ特殊メイクという高校時代からの興味・関心の対象をずっと追い続けたのです。すると、そのプロセス上で必然的に英語を話せるようになってしまったわけです。ここが重要なポイントですが、彼は「英語の習得」をメインの目標に置いていませんでした。そうではなく、自分が本当に心の底から没頭できることを追求していたら、その結果「副産物」として英語力が勝手に身についてしまった…ということです。
「好きこそ物の上手なれ」…英語との関わりが辛くない理由
実はこのような例は、私の身の周りでもよくあります。例えば、私の知り合いで映画が三度の飯より好きという根っからの映画フリークがいます。彼は四六時中洋画や海外ドラマを観ては海外のファンサイトなども頻繁にチェックし、自らもコメント等を英語でSNSに投稿していました。どちらかというと勉強が苦手なタイプの彼でしたが、勉強らしい勉強をしなくても最終的には英語ペラペラになってしまいました。
また、これは私の娘の話ですが『サウスパーク』というアメリカのアニメが大好きで暇さえあれば YouTube で動画を眺めていました。かなり早口のナチュラル・スピードの英語なので意味はよくわからなかったようですが、知らぬ間にリスニング力だけが格段に向上しました。アニメの絵がかわいいので眺めていただけですが、英語音声をシャワーのように浴び続けていた結果、自然と英語の聴解力が身についたのです。
他にも、私の英語講座の受講生さんの中で、海外のPCゲームが大好きで、ファンのコミュニティや開発者らと情報交換をすることで英語力を身につけた女性がいます。彼女は英語の勉強をずっと続けてきたのですが、なかなか英語を話せるようにならないので半ば諦め気分になっていたそうです。
ある時、彼女は英語の勉強を完全に止め、ゲームの世界に没頭するようになりました。具体的には海外のオンライン・フォーラムでディスカッションをしたり、あるいは国際的なゲームイベントに参加したり、積極的にゲームに関わるようにしたのです。するとどうでしょう。あれほど勉強を続けても喋れなかった英語がいとも簡単に話せるようになり、また聞き取れるようにもなったそうです。
ここで一つ重要な証言があります。それは彼女が「ゲームのことであれば英語を読んだり書いたりすることがちっとも辛くないと感じた」ということです。まさにここに英語習得の究極のヒントが隠されているのではないでしょうか。そうです。いずれのケースでも言えることは、当人たちは「英語の勉強をしている」という自覚があまり無いということです。
英語学習の新常識:自分の興味・関心の対象を「英語」を通じて追い求めてみる
もちろん、この人たちが英語力を身につける上で、全く英語の学習をしていないということはあり得ないでしょう。自分たちの興味・関心の追求のプロセス上でわからない単語の意味を調べたり、文法を確認したりといった作業は当然必要です。しかし、当人たちのメインの目的は「自分の興味・関心の対象の追求」にあって、「英語の勉強」には無かったのです。
あくまでも、自分が好きなことや興味・関心の対象を追い求めていて、その過程で英語と触れ合っていたら、自然と英語力が身についてしまった…ということですね。さらに言えば、その英語との触れ合いは他人から見れば大変な作業や辛い試練のように見えるかも知れませんが、彼らにとってそれらはちっとも困難なものではないのです。
なぜなら、彼らの真の目的は英語習得にあるのではなく、それぞれの好きなことや興味・関心の対象の追求にあるからです。自分の専門分野や興味・関心の対象を追求出来るのであれば、人は苦を苦とも感じません。それはむしろ好奇心を満たす上で得られる喜びのように感じられるでしょう。
一方で、「英語を話せるようになりたい」「聞き取れるようになりたい」と強く願っている学習者ほど、英語の勉強自体がメインの目的となってしまいがちです。「今日は単語を何十個覚えなければいけない」「今日は何ページ文法を勉強しなければいけない」…そんな強迫観念の下で続ける英語の学習は苦痛以外の何物でもありません。
しかしそれでも日本人はもっともっと勉強しなければ!と必死になって受験勉強のような英語知識の詰め込み学習を続けてしまいます。英語を話せないのは語彙が少ないから、或いは文法の理解が曖昧だから…と、とにかく「英語の勉強」をメインの目標に置き、頑張り続けてしまうのです。「もっと、もっと…」と自分を追い込めば追い込む程辛くなり、英語を話せるようになる可能性が低くなるにも関わらず、です。
自分の興味・関心の対象を英語で調べたり、情報発信したりしてみよう!
そこで、本当に英語を話せるようになりたい、聞き取れるようになりたいと考えている方にお勧めの方法があります。それは、英語の勉強自体をメインの目標・目的にするのではなく、自分が興味・関心を持てることや専門分野を英語で調べたり、情報発信したりするという学習法です。
例えば、旅行が好きな方は、海外の旅行ブログを読んだり、自分の旅行体験を英語で書いてみるといいでしょう。また、料理が好きな方は、海外のレシピサイトを見たり、料理動画を英語で視聴して実際に料理を作るなどしてみるのもおススメです。いずれにしても「英語学習」をメインの目標として勉強するのではなく、あなたの興味・関心の対象の追求をまず第一に考え、その追求のプロセスに英語を絡めてみると良いのです。このアプローチをとることで、どんなに英語が苦手な人であっても、必ず英語を話し、聞き取れるようになります。なぜなら、人は自分の興味・関心の対象の追求であれば、苦を苦とも思わず精力的に前進出来るからです。
私自身、古いアナログシンセサイザーに興味・関心があるので、よく海外のブログを読んだり YouTube の動画を視聴したりします。もちろん私の職業は通訳者・翻訳者ですから、英語を読んだり聞き取ったりすることに抵抗はありませんが、それでも仕事で英語を扱う場合は多少のストレスを感じるものです。しかし自分の趣味や好きなことに関する英語であれば、何のストレスを感じることなくどんどん読んだり、聞き取ったりすることが出来ます。
傍から見れば困難なことも本人からすればむしろ「喜び」に
もっと言えば、知識の吸収度合いや速度、記憶の保持率にも顕著な違いが出てきます。自分が好きなことや興味・関心をもてることであれば、どんどん覚えられますし、覚えたことが記憶に強く定着するのでなかなか忘れません。しかし、これが厭々覚えたことであればどうでしょう?おそらく数日経てばほとんどの学習内容を忘れてしまうのではないでしょうか?多くの場合、義務感や強制感から英語の学習を続けていても良い結果は期待出来ません。
一方で、自分が好きなこと、興味・関心のあることの追求をメインの目的とすると大抵の困難は乗り越えることが出来るようになります。たとえ長文の英語であっても、自分の好きなことに関する内容であればむしろ楽しく読み進められるということです。ここが一つのポイントですが、もしかするとそれは、他人の目から見れば困難な作業に感じられるかも知れません。しかし、当の本人にとってはちっとも辛いことではないのです。
むしろ、好きなことを追求出来る「楽しいプロセス」に他ならないというわけです。よく新発売のiPhoneだとか、ゲーム機やソフト等々の発売日に前夜から徹夜して並んでいる人々がいますよね。傍から見れば、何でわざわざあんな大変なことをしているんだろう?と疑問に感じるかも知れません。しかし当人たちからすれば、何てことはない話なのです。むしろ徹夜で並ぶことは彼らにとって「喜び」といえる行為なのです。自分の好きなことや興味・関心の対象を追求し、そのプロセス上で英語と触れ合うということは、それと似ています。
英語を楽しむための第一歩を踏み出してみよう!
実際には、英語と触れ合う過程で、傍から見れば大変なことをしているように見えるかも知れませんが、当人たちにとっては何てことはありません。ぜひ、あなたの好きなことや興味・関心のあることを英語で調べてみて下さい。YouTube の動画を英語で視聴するのも良いでしょう。あるいは海外のサイトを検索してみるのも楽しくておススメです。
さらにもう一段階上の挑戦として、あなたの好きなことや興味・関心のあることに関する情報発信を英語で行ってみるのも良いでしょう。例えば、英語で日記をつけたり、調べたことを英語でまとめたり、英語で情報発信のサイトやブログを立ち上げてみたり、SNSに投稿してみたり、同じ趣味を持つ海外の人々とオンラインで交流してみたり、色々なアウトプットの仕方が考えられます。
もしあなたが今すぐにメインの目標を「英語習得」から「自分の興味・関心の追求」にシフトし、その過程で英語と触れ合い続けることが出来るようになれば、あなたはものすごい速さで英語をマスターすることが出来るようになります。是非、あなたの好きなこと、興味・関心の対象を英語で追求してみてください。英語の習得がもっと楽しく、そして効果的なものになるはずです😊
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